
MISSION工業技術博物館の使命


博物館活動の基本は、「資料の収集・保管、調査・研究、展示、教育・普及」ですが、当館の様な工業技術系の博物館として、これらの活動を革新的に推し進めるため、図に示すような5つの指標を設定して、取組みたいと考えております。
その一つ目は、「見せる化(Visualization)」です。博物館の使命の一つである「展示、教育・普及」については、収集・保管してある資料を如何に見せるかで、その効果が大きく異なってくるかと思われます。これまでにも、展示物をできる限りテーマ性を持って展示するなど、多くの取組を行ってきておりますが、まだ、ご案内無しで、深く理解し学んで頂ける環境には、なっていない状況と言えます。今後は、これらも含めて、楽しく見学しながら、より深く学んで頂くための「見せる化」についての研究も行いたいと考えております。
以上の様な館内の展示物だけではなく、ホームページの有効活用、学会活動などを通しても、当博物館の「見せる化」を推進できるものと思われ、これらへの取組にも力を入れていきたいと考えております。
その二つ目としては、つなぐ化(Connectivity)」が挙げられます。当博物館では、後援会を組織して、ものづくり関連企業や個人会員の皆様のご支援を受けながら博物館活動を実施しております。例えば、この組織的つながりを有効活用させて頂き、産業界の皆様に各社の社史をご寄贈頂いたり、工作機械メーカ各社の製品開発状況をアンケートし、日本の工作機械産業の動向として分析した結果を産業界の皆様にご報告させて頂くなどの活動を行ったりしております。
今後は、この後援会組織をベースに、後援会会員、産・学、他の博物館関係者との繋がりを強化するとともに、更に、後援会会員同士、産・産、学・学、博・博間の繋がりの場も提供していきたいと思います。これらにより、「資料の収集、調査研究」を強力に、かつ効果的に推し進めることが可能になるとと共に、ものづくり関係者間の交流も促進されることが期待されます。
今後も、皆様のご協力を得やすくするために、上記のネットワークを有効に活用させて頂き、産学連携で工作機械をはじめとして、ものづくり関連の歴史を俯瞰的に、包括的に整理できればと思っております。
三つ目は、当館の「人材育成施設化(Utilization as HRD)」です。このためには、当館を学びの場として活用しやすい施設にすることが必要であると考えております。当博物館には、多くの生きた教材が展示されておりますが、それらを学生、企業の新人、中堅技術者、一般市民の皆様の来館目的、人材育成目的に合わせて活用して頂くことができるようにしたいと思っております。そのために利用して頂き易い環境整備とそのための資料や展示物を増やしていく必要があると考えております。この環境が、「教育・普及」活動の推進に効率的に作用していくためには、皆様に置かれても、人材育成の目標、目的などを明確にされてご来館頂けるとより効果的かと思います。
大学内はもとより、産業界の皆様にも、各社の人材育成の場として、大いにご活用頂き、皆様から色々とご意見も伺いながら、より皆様のご期待に沿える人材育成施設にすべく取り組んで参りたいと思っております。
四つ目は、「柔軟化(Flexibility)」です。例えば、上記の様に、見学者のレベルに柔軟に対応できる展示になっていること、日本人、外国人にも同じように案内できる体制が整っていること、機械の裏側が見えない、機械は危険であるので触れることができない、など多くの見学上の制限がある中で、それらの制限を感じさせない見学ができることなど、多くの柔軟化対応策が必要と考えられます。これらを通して、「展示、教育・普及」活動をさらに強化していければと考えております。
五つ目は、「持続可能化(Sustainability)」です。当館は、動態保存展示を特長の一つとしておりますが、このためには、永続的に展示物を当時のままに保存しながら実際に動かしてお見せできるように、動態保存展示の持続可能性を高める必要があります。これにより、常に、当時の機械の稼働状況を肌で感じて頂き、当該の展示物がどのような環境で稼働していたかを実感して頂くことができるようになります。
また、今後も歴史的に残すべき工業製品は増え続けます。これらを評価し、歴史的に価値あるものを新たな展示品として加えていく仕組みを確立し、博物館の展示体制の持続可能性も高める必要があります。展示できる、保管できるスペースには限界があります。すべてデジタル化し、データで残し、バーチャルな博物館とすることで良いのか、大変疑問です。さらに、会員の皆様、産学博の皆様とのネットワークの持続可能化への取組も、「教育・普及」の面からは非常に重要と言えます。この促進のためには、博物館ニュースやホームページをさらに充実させたいと思っております。
この様に、色々な切り口で持続可能性を高め、最終的には、当博物館の持続可能性を最大限に高めていく必要があると考えております。
以上の5つの指標の頭文字を並べると「VCUFS(ブイカフス):Vital Center for Universal Future Solution(普遍的な将来解決策を見つけるための拠点)」という標語になります。今年度は、5つの指標を実現させながら、当館をこのような「将来の各種課題の普遍的な解決策を見つけられるような拠点」としてご活用いただける博物館を目指していきたいと考えております。
Cuffs(カフス)は,ご存知のように,シャツの袖口のことで,袖先の形を安定させる,汚れの防止,装飾の目的のために設けられております.日本語でカフスは,カフスボタンのことを意味しており,ワイシャツの袖口を留める装飾的な役割を果たしております.上記指標(V CUFS)は,袖口と5つのカフスボタンをイメージしており,博物館のサービス窓口(袖口)をより良いものとするために5つの指標(ボタン)を適宜使い分けて,博物館としての最高のパフォーマンスを実現することを趣旨としています.
