第29回 特別展 「研削盤の歴史とその産業への貢献史を探る」を開催中
2024.11.02 イベント
当博物館では,工作機械の歴史をより深く,正確に理解することを目指して,ここ数年,工作機械の歴史に関する特別展を開催してきました.
その開催趣旨は,これまでの歴史年表とは異なり,工作機械の発展を促した関連要素技術の歴史も含めて,工作機械の歴史を俯瞰的に整理することにより,その目的に応じて色々な切り口から工作機械の歴史を分析,考察し易くするというものです.
その初回として,2022年度は,「工作機械の俯瞰的技術史を探る」をテーマとし工作機械の歴史を全体的に概観し,俯瞰的に見ることの有効性を示しました.
2023年度はこの成果をさらに深堀りするために,個別の工作機械を取り上げることとし,特別展「歯車加工機の歴史とその産業への貢献史を探る」を開催致しました.
今年度は,個別の工作機械の歴史の第2弾として研削盤をとり上げ,特別展「研削盤の歴史とその産業への貢献史を探る」を開催することに致しました.
研削盤は,本パネル展示会場でも,展示パネルにしておりますように,幅広い産業で活躍しており,産業の発展に多大なる貢献を果たしてきました.研削盤は,これら産業で使われている,製造設備(各種産業機械)を構成している機械部品を製造するにあたり,その最終仕上げ工程で使われるため,それら製造設備の性能に大きな影響を及ぼすことになります.つまり,研削盤のお陰でより高性能な製造設備が生み出されれば,その設備により高品位な最終製品を生産することが可能になることから,研削盤の産業界における役割は,非常に大きいと言えます.
このような研削盤の性能に影響を及ぼす因子を整理してみると以下のようになります.
(1) 研削盤,砥石,砥石・工作物取付具などの加工システム構成要素
(2) ドレッサやバランシング装置,研削液供給・浄化装置などの段取り関連要素
(3) 各種加工技術とユーザニーズ(研削盤活用産業)
(4) 加工現象(研削抵抗や温度,振動,砥石摩耗など)の測定・評価技術
(5) 加工精度や加工品位の測定・評価技術 以上の様に多数の影響因子があり,
これまでの特別展で明らかにしてきたように,これらの発展の歴史についても調査して,これらの発展史も含めて俯瞰的に研削盤の歴史を整理する必要がります.しかしながら,博物館単独でこのような調査を行うことは困難であり,研削盤については,国内の研削盤メーカ,海外の研削盤については,海外メーカと海外研削盤の取り扱い商社に,研削盤以外の(1)~(5)に関わる分野については,その分野の専門家に各分野の現状技術の体系化とその発展史の調査をお願いしました.
皆様のご尽力のお陰で,研削盤については,国内26社,海外は,少ないものの8社のご協力を得ることができ,国内については,より正確な歴史年表にすることができました.また関連分野ついては,ご担当の皆様の強力なご尽力の下,15分野について調査を行うことができ,その分野の基礎事項の体系化を行い,その分野の現状を分かり易くパネルにまとめて頂くことができました.これらを基に,研削盤の歴史とともにそれら関連分野の歴史を俯瞰的見ることができる歴史年表として整理することができましたので,ご覧頂きたく思います.
これらを基に,研削盤の発展の歴史を改めて振り返り,今後の研削盤の発展のためには何が必要なのかについても考える切っ掛けになれば,幸いです.
末筆ながら,以上で述べましたように,本特別展は,国内外の多数の研削盤メーカ様と研削盤関連分野の多くの専門家の皆様のご協力の基,開催できる運びとなりました.改めて,ご協力,ご支援を頂きました皆様に心より感謝を申し上げます.
日本工業大学工業技術博物館 館長 清水伸二
開催期間:2024年11月6日(水) ~ 3月31日(月)