工業技術博物館

第30回 特別展 「英国公共用蒸気鉄道開業200年と日本の鉄道近代化の歴史」を開催中

2025.10.31 イベント

 本年は,「英国公共用蒸気鉄道開業200年と日本の鉄道近代化の歴史」をテーマに,特別展を開催することと致しました.
 この切っ掛けは,産業技術史に深い関心を持たれている,サレジオ工業高等専門学校専攻科・客員教授で,当館の特別 研究員でもある,堤 一郎先生から,以下のような情報と,ご提案を頂いたことにあります.

(1)今年は,蒸気機関車を使った世界初の公共用鉄道である英国の“ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道(S&DR)”が 1825年に開業してから200年目を迎える記念すべき年である.
(2)本学工業技術博物館では,1891年に英国ダブス(Dubs)社で製造され,日本に輸入された蒸気機関車を動態保存して おり,英国との関係がある.
(3)当館で,この節目に,英国の鉄道の歴史を振り返り,日本の鉄道に与えた影響などについて理解を深めるのも意義がある のではないか.  

 以上のようなお話を頂き,また堤先生ご自身も英国の鉄道史を調査されたことがあるとのことで,堤先生に全面的にご指導 を頂けるというお言葉を頂き,本特別展を開催することに致しました.  
 英国の蒸気鉄道の歴史を調べていくと,既に始まっていた産業革命の推進のために鉄道が必要になった背景があり, さらには鉄道に必要な動力としての蒸気機関の発明などがその原動力になり,蒸気機関車が発明され,世界最初の公共用 蒸気鉄道が実現されていくことが分かります.そして,この鉄道技術の成果が,世界各国へ伝わり,各国での産業革命に大きな 貢献を果たしながら,日本にも影響を及ぼしてきたことが分かります.
 そこで,本特別展では,以下の様な項目について調査することにしました.  

1)産業革命の始まりとその背景  
2)炭坑内での人力作業の機械化  
3)蒸気機関の改良と工作機械の役割  
4)鉄道による石炭の輸送技術  
5)蒸気機関車を使用した世界最初の公共用鉄道開業までの道のり  
6)英国からの日本への鉄道技術の導入  
7)日本の近代化と国内鉄道の拡大  
8)上記の史実とその関連史実  
 以上の調査結果を29枚のパネルにして展示しております.  

 最初の展示パネルにも記述しておりますが,鉄道は,産業革命の中で最後に輸送分野で起こった革命であり,産業革命の 総仕上げ的な位置づけにあります.この世界初の鉄道技術は,最後のパネル年表でも明らかにしております様に,世界各国 に伝承され,日本の鉄道技術の近代化にも貢献していることが分かります.その一つの証しとして,当館では,本年134歳を 迎えた蒸気機関車A2109号を所蔵し,SL館にて展示しておりますので,特別展のパネル展示と合わせてご見学頂ければと 思います.  
 以上のような展示をご覧頂き,皆様とともに,今から200年前の英国の鉄道技術に思いを馳せ,その当時から鉄道が果たし てきた社会的意義,役割について,改めて考える機会になればと思います.  
                    
                               日本工業大学工業技術博物館 館長 清水伸二

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