工業技術博物館

第31回 特別展 「機械を測る- 寸法・形状を測る技術とその産業への貢献 -」を開催中

2026.10.23 イベント

 私たちは、意識するしないにかかわらず、「はかる」という行為に支えられて生きています。朝の起床から夜の就寝までの「時間」を計り、食品の重量を量り、衣服の寸法を測る。 これらの日常の「はかる」が無くては,私たちの生活は成り立ちません.  
 このような「はかる」行為を整理してみると,身近なものだけでも,測る(長さ・面積・角度),計る(時間,数),量る(重さ・体積)と,目的によって,様々に使い分けられていることが分かります.これらをより正確に「はかれる」ようになったお陰で,私たちは,便利で安全な生活を享受していると言えます.
 一方,当館が所蔵する「工作機械」の世界に目を向けると,その技術は革新的な進化を遂げています.その精度には,「あらゆる機械をつくる機械」として,最先端の現場では,サブミクロンからナノオーダが求められるようになりました.
 こうした超精密な機械を作るためにも,また,そこから生み出される自動車,電車,航空機といった製品の性能を保証するためにも,無数の「はかる」行為が繰り返されています.  このように,私たちの世界は「はかる」行為で満ち溢れています.しかし,それがあまりにも日常に溶け込んでいるため,普段その存在を意識することはほとんどありません.
 このような背景のもと,本特別展は,計測分野の権威で有り,現在当館の特別研究員を務められている上野滋先生(元財団法人機械技術振興協会 理事)から「はかることの意味や意義を改めて考えてみるのはどうか」とのご提案をきっかけに,実施する運びとなりました.上野先生の全面的なご指導の下,「何故,何のために,何をはかるのか」という本質を改めて問い直すような企画を目指すこととしました.
 当館は,工作機械を中核とする博物館ですので,現代の高度なものづくりを支える「はかる技術」の中でも,特に,長さを基本とする「寸法・形状を測る技術」に焦点を当て,その歩みを紐解くこととしました.
 本展では,古代期から第3次産業革命期に至るまで,産業の発展ともに,その歩みをともにしてきた測定技術を振り返ります.単に長さを測る文化の始まりから,高度な寸法・形状測定へと進化を遂げた歴史を,以下の構成で展示いたします.  

<古代期から科学革命期(紀元前3000年~18世紀)>
 (1) 古代から中世期(紀元前3000年~15世紀):「はかる」行為のはじまり
 (2) ルネッサンス期(15世紀~16世紀)の革新:測るための革新的アイデア
 (3) 産業・科学革命期(17世紀~20世紀後半)の「はかる技術」と「長さの基準」の変遷
 <第一次産業革命期(18世紀後半~19世紀前半)>
 (4) 測定基準としての「平面の確立」と近代ノギス,マイクロメータ,コンパレータの誕生
 <第二次産業革命期(19世紀後半~20世紀前半)>  
 (5)普及・高能率化への道(加工精度向上・部品の互換性への対応):
   限界ゲージ,ブロックゲージの登場,現場を支えた測定工具(インジケータ,パス,ダイヤルゲージ,計測の自動化)
   当時を支えた2大メーカ(Car Zeiss, SIPの貢献)
 (6) 科学による測定技術の向上:アッベの定理,温度と長さ
 (7) モータリゼ―ションと航空機産業からのニーズに応える測定器: 表面粗さ,形状測定技術の発展,2次元から3次元座標測定へ  
<第三次産業革命期(20世紀後半~)>
 (8)分解能と測定範囲の革新:レーザ干渉測定器
 (9) デジタル化への道
 (10)超微小,長大計測,構造内部計測の発展

 以上の様に,機械を対象に,「はかる」ことの必要性の歴史と,そこにおける課題とその解決法の歴史を振り返り,改めて,「はかる」ことの意味,意義,重要性を考える機会になればと思います.

                    日本工業大学工業技術博物館 館長 清水伸二

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