工業技術博物館

第28回 特別展 「歯車加工機とその産業への貢献史を探る」 開催期間延長中

2023.11.26 イベント

 当博物館では,昨年は,工作機械全機種を対象とした,「工作機械の俯瞰的技術史を探る」をテーマに特別展を開催させて頂きました.今後は,この際に調査した2000年までの個別の工作機械の歴史について,それ以降,現在までを含めて,再調査して,個別工作機械の歴史をさらに深堀りしながら,より内容の充実と正確度を高めていけたらと考えておりました.そのような中,昨年度,今年度と当博物館が所蔵していなかった,まがり歯かさ歯車歯切り盤,ハイポイド歯切り盤のご寄贈を頂けることになりました.これにより,主な歯車加工機が揃うこととなり,今回は,歯車加工機を対象とした特別展を開催することに致しました.  
 歯車の基本的な役割は,各種歯車を組合せ,動力(エネルギ)と運動(回転・直進)の伝達とその伝達方向と伝達力の大きさを必要に応じて変化させることと言えます.当初は,人間,家畜,水車などの動力を増大させて伝えることが主体とされ,既に紀元前250年頃にはウインチ,その後は製粉機などに適用されるとともに,それが時計や測量機などに使われるようになり,その精度も要求されるようになりました.その後も,より多くの産業ニーズに応えながら,現在の様に,工作機械,自動車,鉄道,船舶,航空機,風力発電,建設機械など,幅広い産業分野で,コンパクトな動力伝達装置として貢献しております.
 最近,特に自動車産業では,脱酸素化に向けて急速にEV化が進められております.これにより,エンジンやトランスミッションが不要となり,必要な歯車の総数は減ってしまいますが,歯車に求められる精度,強度,伝導効率は,ますます高くなってきております.また,今後のニーズが増大することが期待される産業としては,ロボット,風力発電,食品機械など多くの産業分野が挙げられおり,同様に歯車の高精度化がますます強く求められるなど,歯車技術は,大きな転換期を迎えていると言えます.  
 このような状況を背景に,本特別展では,これまでの歯車加工機の発展の歴史とともに,この発展を支えてきた歯車関連技術も含めて,その歴史を振り返った結果について報告させて頂くことにしました.
  歯車加工機は,旋盤,フライス盤,研削盤などの汎用的な工作機械とは異なり.歯車という特定の部品を加工する専用機的な工作機械という感覚があります.このためか,いざその歴史の調査を始めてみますと,その歴史を理解するために必要となる,工作物である歯車の種類とその使われ方,それら歯車の加工法と加工機,測定機との関係も含めた体系的な資料も少ないことが判明しました.
 これらの調査項目も膨大であり,調査時間と当館のパワー不足もあり,資料調査も不十分と言えます.まだ,未完の状況ではありますが,出来る限り,歯車加工機の歴史を理解するための基本的な事項について調査した結果をご報告させて頂きたく思います.本特別展を通して,皆様と共に,歯車の今後の役割と,その実現のための今後の歯車加工機の在り方を改めて考えるとともに,歯車加工機の産業への貢献度をさらに確実にするためのヒントを得る機会になればと思います. これまで活躍してきた歯車加工機の実物展示とともに,パネル展示内容をご覧頂き,色々とご指導を賜わりたく,よろしくお願い申し上げます.

                   日本工業大学工業技術博物館  館長 清水伸二

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